熊本で地震

熊本で大きな地震がありました。とても浅い震源震度5を超えるような地震が頻発しました。現在もまだ震度3くらいの地震が続いていて、その震源が移動しているようなのです。今までこのようなタイプの地震は経験がないですね。震度7地震が2度続くというのも初めてではないでしょうか。建物の被害も多く発生しており、亡くなった方もいらしゃいますし、多くの方が避難を余儀なくされているのは周知のとおりです。
建物の被害を見てみると、やはり古民家の被害が多いのですが、それは十分に予想されたものです。ところが、いわゆる新耐震以降の建物にも被害が出ているのですね。新耐震以前の建物を新耐震の基準に合わせて耐震補強した建物にも被害が出ています。もちろん新耐震の基準に適合していても、絶対に安全だと言うことはできません。どんな建物でも動いた断層の上に建っていたら被害を免れないですから。
ちなみに新耐震とは、1981年(昭和56年)に新たに設定された耐震基準のことです。で、それ以前の耐震基準を旧耐震と呼んでいます。その両者でどのくらいの違いがあるのかと言うと、旧耐震では震度5程度、新耐震では震度6強以上の地震に耐え得るということになっています。ところでこの震度なんですが、6強を超える地震はすべて震度7と表示されます。ですから、震度7と言っても6強に近いものから想定外の大きさのものまであるのです。その強さには大きな違いがあるかもしれないのです。
今回の地震で私が一番ショックを受けたのは、阿蘇東海大学の学生さんが下宿していたアパートが倒壊し、2人が亡くなるなどの大きな被害が出たことです。二階建ての建物の一階部分が完全に押し潰されてしまいました。これらの建物は、どう見ても新耐震以降に建てられたものですよね。そう言えば、他でも新耐震以降の建物の一階部分が潰れ、二階部分のみが残っている映像を見ました。とても新耐震とは思えないひどさです。
ではなぜこんなことが起こったのだろうか。その原因だと思われるもののひとつが「地域別地震係数」です。建築構造設計で使用する地震力を算定するときに使用します。係数ですから「1.0」が標準ということです。それよりも大きければ地震力を大きく設定するということですし、それより小さければ地震力を小さく設定するということです。
「地域別地震係数」は地域ごとに設定されているのですが、九州は0.8と0.9になっています。沖縄県はなんと0.7です。具体的に言うと、地震係数1.0とは震度6強を超える地震でも倒壊しない強度ということです。0.9では震度6強の地震には耐え得るが、震度7には耐えられないのです。0.8では震度6強でも無理ということですね。地震係数1.0というのは、建築基準法で定める最低限度の強度とされているはずですので、これ以上に設定することはあってもこれ以下というのはあり得ないですよね。ちなみに、東海地震の可能性を指摘されている静岡県は、独自に1.2という基準を設けています。
今回の地震では橋の被害も多く出ているように思うのですが、これもこの影響なのかもしれないなあ。
ところでもうひとつ地震係数に関する基準があります。1999年(平成11年)に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品質確保法)」では地震係数を「1.0、1.25、1.5」とし、それぞれが「耐震等級1、2、3」に対応しています。耐震等級1が建築基準法で許容される最低強度、耐震等級2がその1.25倍、耐震等級3が1.5倍ということです。
耐震等級1とは、震度6強から弱い震度7地震に耐え得る強度です。ですので普通の震度7には耐えられません。現在、首都圏の新築マンションの耐震等級は1.5〜2というのが常識になっているようです。今回の地震を機にこのあたりのことも押さえておいた方がいいのではないでしょうか。