国立こども図書館

先日、招待券をもらったので「ベルギー王立美術館展」を見に、久しぶりに上野の国立西洋美術館に行った。

この建物はル・コルビュジェの設計によるもので、彼の美術館構想を実現させた唯一のものだ。螺旋形の平面をしたギャラリーが無限に続く(実現したのは一重だけだが)。その後彼の弟子である前川國男が増築をしている。

最近新しい美術館がたくさん出来ていて、それに馴染んでいるせいか、国立西洋美術館にはがっかりさせられた。以前は感動して訪れていたと思うのだが。空間としていいのは地下に増築したホールだけだ。増築部分は、暗くて狭い廊下と階段を上がったり下がったりで空間の楽しさがない。コルビュジェ設計部分は天井が低く狭い。何よりもいけないのが、作品をよく見せないことと、気持ちよく作品を見ることが出来ないことだ。近くの都美術館で「エルミタージュ美術館展」をやっていて、こちらはそんなに混んでいなかったのでなおさらだ。(妻に言わせると、常設展は「作品自体も一級品ではない」とのことだ。)都美術館(これも前川國男設計)も楽しい美術館ではないが。

この時代の公共美術館は、たくさんの観客をスムーズに処理することだけを考えていたんだろうとしか思えない。楽しくない。居心地もよくない。こんな不平を言いながら、芸大の脇を通ると、ホームレスを集めて牧師(?)とおぼしき人物が説教している。炊き出しをやるから説教を聴けというのだろう。なおさら嫌な気分になり、少々気持ち悪さを覚えながら国立こども図書館に向かう。

元の帝国図書館安藤忠雄が改装したものだ。完成してからしばらく経つが、初めて訪れた。ルネッサンス様式の古い建物からガラス張りのエントランスが突き出ている。鉄板のエントランスドアが新鮮だ。工法の斬新さもあり増築部分ののびのびとした明るい空間が気持ちいい。古い建物の部分もきれいに復元され、新しく付加された部分との対比と調和も美しい。インテリアを積層面を見せたLVL材で構成しているのも美しい。私が見た安藤忠雄の仕事では一番いいのではないだろうか。とにかく気持ちいい建物だ。西洋美術館のことなど忘れてしまった。

安藤忠雄の最近の作品としては、表参道ヒルズを思い出す。これは最悪。楽しくない建物の代表だ。表参道のぶらぶら歩きも延々と続くファサードのおかげでうんざりだ。企画しているのが森ビルだから仕方ないか。いかにも回転ドアで子供の頭を噛み砕きそうな姿をした六本木ヒルズの高層ビルを遠くから眺めるたびに、これも森ビルだと納得させられる。