住宅建設会社の倒産問題

今日の昼間のTV番組で、住宅建設会社が倒産し、多くの被害が発生しているという報道を見ました。この問題は今日始まったものではなく、発端とも言えるフジハウスの倒産、それに続くアーバンエステートの倒産から、すでに1年以上経っているはずです。その後、昨年中も中小の住宅建設会社の倒産があり、被害が出ているということでした。倒産の原因はいろいろあると思います。フジハウスとアーバンエステートでは、倒産の原因は明らかに違うと思います。
私はこの問題について、事の善悪とは別に、何かとても「いやーな」感じを持っています。それは金銭問題に直接係わっているからです。アーバンエステートといえば、坪25万円で家が建つというCMを盛んに流していた会社です。その時から、ほとんどサギに近いものを感じていました。
実は、私が工事をお願いしていた工務店が倒産してしまったことがあります。幸い、工事が終わった直後で、残工事が少し残っていましたが、工務店自体も良心的な会社で、大きな被害はありませんでした。私が施工者としてこの工務店を選定したのは、工事金額によります。数社から工事見積を取った結果、一番安い見積り金額だったのでこの工務店に決定しました。このこと自体は普通に行われていることで問題はないと思います。ただし、この時は施主の予算額がかなり低く、この工務店以外はほとんど無理だったのです。
安い金額で工事をしてもらえるというのはありがたいことです、それ自体は決して悪いことではありません。いい加減な工事をされてしまうのでは困りますが、この工務店もきちんとした工事をしてくれました。しかし、安い金額で工事をすること自体、やはりどこかで無理をしているのではないでしょうか。それが倒産という形につながったのだと思います。
その時に思いました。「適正な価格で、きちんとした工事をしてもらう」、これが一番いいのだと。しかし、適正な価格とはいくらでしょうか。それは建物の質と関係します。質の高い家を造ろうとすれば、必要なコストも大きくなります。
このことに対して、私の設計する建物で許容することのできる最低レベルの質と、それに必要なコストの目安を決めることにしました。そして、それを施主にきちんと提示することにしました。
勘違いしてはいけません。たとえば家を建てようと思い工務店から見積を取ったところ、3000万円の見積が出てきました。再度見積を取ったところ、2500万円の見積が出てきました。500万円安くなりました。しかし、3000万円の家が2500万円になることはありません。工務店は2500万円の家を2500万円で建てるだけです。洋服を買うならば、バーゲンセールで半額で買っても正規の値段で買っても服自体に変わりはありませんが、家を建てる場合はそうはいきません。

この問題については、私なりにいろいろ考えることがあり、機会をみて思いつくままにこれからも書いていきたいと思います。