修学院離宮

先週でしたか(放映されたのはもっと前のようです)、BS放送修学院離宮の番組を見ました。修学院離宮は、憧れの場所のひとつです。行きたい時に行って、すきなだけいられる場所ではないので、一度も訪れたことがありません。ですので、なおさらです。
修学院離宮後水尾上皇が造られた別荘で、とても魅力的です。現在の修学院離宮は、下、中、上御茶屋の三つから構成されていますが、後水尾上皇離宮として造られたのは、下と上の離宮だけです。中御茶屋は、同時代に上皇の皇女の御所として造られたもので、明治になって修学院離宮編入されました。
特徴的なのは、これら三つの御茶屋が広い面積の中に、島のように点在していることです。これらは松並木の小径でつながっています。小径の両側には棚田が広がっています。この棚田は離宮の外ですが、離宮の内でもあるのです。
点在させるという手法は、わが国の空間構成の特徴のひとつです。壁などで空間を囲い込むのではなく、シンボルを配置する事で空間を支配する。囲碁をおやりになる方は、よくわかるのではないでしょうか。囲碁は石を配置することで、領土をとって行くゲームですが、最初に布石を打つわけです。その布石と同じだと考えればいいでしょう。閉鎖することによって造られた閉鎖系の空間ではない、開放系の空間と言えます。
修学院離宮で最も魅力的なのは、やはり上御茶屋でしょう。最も高い位置に建てられた建物から下方へ広がる景色、奥に見える鞍馬の山並みとその向こうに望まれる北山の山容の美しさ、素晴らしいですね。広い池が作られていますが、最初からあたかもそこにあったかのようです。
この池を作るためには、庭の造営というより、大規模な土木工事と言った方がいいような、大工事をしているのです。しかし、それを極力見せない。いや、むしろその痕跡を消そうとしている。これ見よがしに見せるというような、野暮なことはしない。世界一の塔だ、凄いだろうなどということは決して言わない。ダンディズムだ。
大きな庭は、大名庭園にもたくさんありますが、それらとはちょっと雰囲気が違うのだな。大名庭園には、これ見よがしのところやこれでもかというところがあったりする。何となく箱庭のようなところもある。それにたいして、ここはおおらかでゆったりしている、これを雅というのだろうか。何とも優雅だ。平泉の毛越寺の庭を思い出す。この庭も優雅だ。ゆったりと延びやかでなんとものんびりした気持ちになる。いい庭だ。



今はネットでも見学の申し込みができるようで、見学しやすくなっているようです。ただし、時間的なの制約は変わりません。それでもいつかは行ってみたいです。